離婚した夫婦の子供の話

子供がいる夫婦が離婚をする際、大人は決まって「子供のために」「子供を一番に考えて」とよく言っていると思うけど、じゃあその子供って、両親が離婚したことをどのように捉えているのだろう。

夫婦間の離婚トピックは目にする機会が多いけど、その子供の心境が語られたものってあまり見ない気がする。あったとしてもあくまで体験談として語る程度で、当時の気持ちって明け透けに語ったりはしないよね。

私の場合は離婚がすごく悲しかったけど、その気持ちを誰にも言えないまま死に向かっているので、自分の気持ちを整理するためにも文章にしてみた。

以下は私の離婚体験と、どこにも吐き出せないでいる当時の気持ちを綴っただけで、願いはあっても特に意味はないのであしからず。

 

 

私が小学生の時に、父がヨソで女を作っていたことが原因で両親は離婚し、母方の祖父母の家で母と祖父母たちと暮らした。私は母から聞いた不倫というものを、調べずとも理解できる年齢だったし(女は耳年増なので)元々家にいない事が多かったが、それでも大好きな父だったので、離婚は本当に本当に悲しかった。

面会交流権については聞いた事がない。母は「あいつは家族を捨てた悪い男だ」と父を非難するので、父に会いたいという気持ちを匂わせると、呆れた眼差しで逆に非難の目がこちらに向いた。

しかしこのまま父と会わないと、いつか私を忘れてしまうのではないかと考えた幼くバカな私は、毎日の出来事やメッセージをお手紙にして封筒に入れ、何日分か溜まったら父宛に郵送しようと考えた。会えなくても元気でやっているということを知って欲しかったからだ。

しかし父の住所を知らないので意味がないと気づきビリビリに破いて捨てたのは1〜2週間後のことだった。バカさ加減に涙が出てくる。

近所に父方祖父母の家もあったり、中学に入ると携帯電話を持たせてもらえたりしたので、父たちとの交流は続けることができた。辛かったのは、父と会ったことを、一緒に暮らしていた母たちには内緒にしないといけなかったこと。遊びに行くと言って家を出る際、「お友達と?」と聞かれて、「うん」と言うのが何より辛かった。家に帰ってその日あった楽しかったことをお話ししたいのに、誰にも言えなかった。悪いことをしているわけでも、嘘をつきたい訳でもないのに。

母は私に、夫婦で何が起きたのか、調停で何を話したのかなど、詳細を教えようとはしなかった。

そのこともあって、私は勝手に脳内で「パパはママ以外の女性がちょっと好きになってしまっただけ」と都合よく解釈していた。詳細は控えるが、もちろんそれだけで離婚に至った訳では無く、父には一人息子がいたということを、私が中学生の時に知った。多分ブサイクな弟だろうと思った。父の、きっと幸せな家庭に想いを馳せるとすごく惨めな気分になり、あまりの悔しさに一時父と連絡を取らない時期もあった。母が寝た後、ベランダに置いた布が張ってある椅子に縮こまり、涙が止まらない夜もあった。

しかし私は離婚を告げられた日以降、家族の前ではこのことで泣くことは無かった。嘘か本当か3組に1組が離婚していると言われている現代で、両親の離婚ごときでメソメソするのは恥ずかしく、ダサいことだと思っていた。また周りの大人たちに心配をかけたくなかったし、なによりかわいそうな子だと思われたくなかったからだった。

祖母は、私の胃腸が弱いのは離婚が原因だと思っているし(その前から弱かったので本当に関係ない)、両親は未だに私に罪悪感を抱いていて、時々突然謝ってくる。私は自分の意思に反してかわいそうな子となっていた。そこから私は、「被害を受けたつもりはない。全く悲しくない」と平然を装い、大人たちを安心させるために必死になった。

この強気発言が逆に働いてしまったのか、今度は父方祖父が、デリカシー無く暗黙の了解であった父の息子の名前を、私もいる茶の間で出すようになり、これには心底腹が立ったので、誰から見てもわかるように反抗的な態度を取った。それを感じ取った自責の念がある父が「名前出すなよ」と言うと、祖父は続けて「昔の話だろう」と言った。

そう思わせてしまった自分の行動が悪いのだけども、それにしたって第三者が心の傷の時効を定めるのはおかしいだろう〜〜〜まあこれはただの愚痴なのでいいです。

拙い文章で勝手ながら誤解して欲しくないのは、母も多分父も常に私のことを愛してくれているし、親といえど一人の人間なので、常に正しい行動ができるわけではないということ。タラレバを言うつもりも毛頭無い。だけど、情けないことに30代にもなって未だに突然思い出して一人でメソメソしてしまう。どうしていつまで経っても悲しい気持ちが消えないのか悩み、専門家に頼ることも視野に入れたが、自分と合わなかった時のリスクがあるため、結局行かずじまいとなった。

 

毎年、必ず見る夢が2種類ある。

1つ目は、両親の手を引いて、一緒に帰ろうと懇願している夢。2つ目は、父と父方祖父母たちと、母と母方祖父母たちが偶然道で出会そうとするのを、双方うまく誘導してバッティングしないようにすると言う不思議な夢だった。どちらの夢にも共通しているのは、私が小学生の姿をしていること。私は夢でもすごくがんばっていたのだった。

どうにかして小学生の私を成仏させたかったけど、多分同じお墓に入ることになるのだろうな。

だからこそ、(当たり前に離婚は家庭の事情や状況にもよるけども)離婚した夫婦の子供は、きちんとその時々の気持ちを吐き出せる環境にいられたらいいな。少しでも悲しかったり、怖い思いをしていないといいな。無理せず、自分を繕わず、悲しい気持ちを、大人になるまで抱え込まないでいてくれたらいいな。

そう願うばかりです。